しずかであつい

美術モデル 碓井翠雨(ウスイスイウ)

痛みの我慢方法

美術モデルの仕事内容は、大きく分けてクロッキーと固定ポーズの2種類があります。今回は固定ポーズの話です。

固定ポーズは1コマ分の仕事ととして、休憩時間を挟みながら20分間同じポーズを6回繰り返します。

20分の積み重ねって、何の変哲もなく見えるポーズでも、どうしても重心の偏りが出てきて痛みが生じてくるのです。

 

例えば立ちポーズ。

1,2回目はタイマーが鳴ったらすぐにポーズをやめてタイマーを止め、休憩着を着るという動きができますが、3回目あたりから調子が変わってきます。

タイマーが鳴った!ストップボタンを押したい…けれど、伸ばした膝裏が痛くて、ゆっくりとしか身体を動かすことができません。

そして次からはポーズ中も足の裏や膝にジンジンと痛みを感じてきます。

でもタイマーは鳴りません。

あー痛いなぁ、と思いながら我慢の時間です。これが仕事ですもの、与えられた20分間はできるだけギブアップしたくありません。

 

そこで、どうやって時間をやり過ごしていくかが問題になります。

今のところの最善策は、なるべく痛み以外のことを考えることでしょうか。

残り時間があと5分だったら、痛みの5分じゃなくて、例えば明日の予定を考える5分にしよう。その方が痛さを忘れられて、時間が過ぎるのが早く感じるから。

ただ、痛みよりも興味をひく考え事を見つけるのが難しいんですよね。だってやっぱり痛いんだもん。油断すると頭の中はすぐに「痛い…痛いよ~、神様だずげで~」と泣き言でいっぱいになってしまいます。(この文章で何回「痛」を使ったでしょうか。そうです、これが痛さしか考えられないときの思考回路です)

そんなときは澄ました顔で、何か!何か考えることー!と、必死で探しています。

先日はラジオがかかっている会場だったので、だいぶ助かりました。MCのトークにいつもの10倍くらい真剣に耳を傾けて「あぁ、そう、へー、ふーん!」などと大袈裟に心のなかで相づちを打ち、流れてくる音楽に「いま長調、ここから単調?」などと分析していました。


いちばんの問題から目を反らすことで、問題解決。

これでいいのかな?

はい、たぶんいいのです。