ワンモアクッション・お尻編
ドミニク・アングル「グランド・オダリスク」
今回は主に座りポーズのときにお尻の下で使うクッション材の紹介です。
立ちポーズのときに中敷きを使うといいよ、というのは先輩モデルさんに教えてもらいましたが、座りポーズでは制作者側の方で文字通りのクッションを用意していただいていて使ったことがあり、自分用も欲しいなぁと思ったことがきっかけです。
クッションの一般的なサイズは一辺約45cm。そこに厚みも加わると、持ち運ぶには大きすぎます。
あと、ふかふかすぎるとお尻が沈んでしまい、描く方の邪魔になってしまいます。
グランド・オダリスクのように小道具として見えるクッションならそれでもいいのかもしれませんが、坐骨が痛いときに補助する役割のものが欲しい…と思って見つけたのがこちらです。
ベビー用低反発枕です。
サイズは約30cm×20cm。これならバッグに入れやすいし、お尻を支えるのにちょうど良い大きさです。
低反発タイプなので沈み込みもそこまで深くなく、しっかりとした弾力があります。
座りポーズはクッション材を使うことはそこまでありませんが、角度によっては身体が痛むことがあり、そんなときには出番となります。
使うときは、目立たないようにシーツの下に入れてしまいます。
こうしてあわれにも、この枕は赤ちゃんの可愛い頭を支えることはなく、私のお尻のお供として添い遂げることとなってしまいました。
ちなみにどこで購入したかというと…
ベビー用品なら西松屋♪です。
カバーをつけるとこんなに可愛いのでした。
ワンモアクッション・足編
デッサンの神様、安井曾太郎の立ちポーズの作品。
●そのままですが、中敷き(インソール)です●
こちらが手持ちの立ちポーズ用中敷きです。
1回目のポーズが終わると足の位置を動かさないまま、筆記具やテープで足の位置をマーキングします。
その後、ポーズ台から降りたら中敷きを持ち出し、裏面にマスキングテープを輪にして貼り、マーキングの中に中敷きを貼りつけます。(今回は自宅でのデモなのでマーキングはありません)
ポーズ中は中敷きを踏んでいるので、制作者からはほとんど見えません。
中敷きを20分間踏んでいると、ほどよいクッション性とデコボコが足裏の刺激になり、タイマーが鳴ったときに脚を動かすと爽快感♪
疲れ具合が当社比で3割くらい軽くなります。
そしてまごうことなき「足の位置はここです!」感。頼もしいです。マーキング材としても優秀です。
痛みの軽減方法・ワンモアクッション
サルビアレウカンサ。モフモフした花と、寄せる波のような房がとても好みな、秋の花。
前回の記事では「痛みはひたすら我慢」なんて書いていますが、長期の固定ポーズだとそれではさすがに辛いものがあります。
1回目のポーズより2回目のポーズの方がダメージが積み重なっているのと同じように、たとえ家に帰ってしっかり眠ってリセットしても、1日目より2日目、3日目…と、どんどん痛みは蓄積していきます。
そのままでは「あぁ仕事行きたくないなぁ」と憂鬱な気分になってしまいますし、身体が故障してしまったら美術モデルを続けられなくなります。日常生活にも影響が出てくる場合もあります。
やはり、痛みなんて無い方が良いに決まっているのです。
●ポーズ台の構造は、台+毛布1,2枚+白いシーツ●
例外もありますが、ポーズ台の敷物の組み合わせはこうなっています。
そこに体重がかかる場所に自分の好みに合ったクッション材を組み合わせると、だいぶ疲れ具合が変わってきます。
今日から固定立ち(座り・寝)ポーズだよ、と事前にわかっている場合は、いつもの仕事道具のバッグの中にクッション材をプラスして出発します。
次回は具体的に、私が使っている「ワンモアクッション」部材を紹介します。
痛みの我慢方法
美術モデルの仕事内容は、大きく分けてクロッキーと固定ポーズの2種類があります。今回は固定ポーズの話です。
固定ポーズは1コマ分の仕事ととして、休憩時間を挟みながら20分間同じポーズを6回繰り返します。
20分の積み重ねって、何の変哲もなく見えるポーズでも、どうしても重心の偏りが出てきて痛みが生じてくるのです。
例えば立ちポーズ。
1,2回目はタイマーが鳴ったらすぐにポーズをやめてタイマーを止め、休憩着を着るという動きができますが、3回目あたりから調子が変わってきます。
タイマーが鳴った!ストップボタンを押したい…けれど、伸ばした膝裏が痛くて、ゆっくりとしか身体を動かすことができません。
そして次からはポーズ中も足の裏や膝にジンジンと痛みを感じてきます。
でもタイマーは鳴りません。
あー痛いなぁ、と思いながら我慢の時間です。これが仕事ですもの、与えられた20分間はできるだけギブアップしたくありません。
そこで、どうやって時間をやり過ごしていくかが問題になります。
今のところの最善策は、なるべく痛み以外のことを考えることでしょうか。
残り時間があと5分だったら、痛みの5分じゃなくて、例えば明日の予定を考える5分にしよう。その方が痛さを忘れられて、時間が過ぎるのが早く感じるから。
ただ、痛みよりも興味をひく考え事を見つけるのが難しいんですよね。だってやっぱり痛いんだもん。油断すると頭の中はすぐに「痛い…痛いよ~、神様だずげで~」と泣き言でいっぱいになってしまいます。(この文章で何回「痛」を使ったでしょうか。そうです、これが痛さしか考えられないときの思考回路です)
そんなときは澄ました顔で、何か!何か考えることー!と、必死で探しています。
先日はラジオがかかっている会場だったので、だいぶ助かりました。MCのトークにいつもの10倍くらい真剣に耳を傾けて「あぁ、そう、へー、ふーん!」などと大袈裟に心のなかで相づちを打ち、流れてくる音楽に「いま長調、ここから単調?」などと分析していました。
いちばんの問題から目を反らすことで、問題解決。
これでいいのかな?
はい、たぶんいいのです。
リピートモデル
夏の花たち
お久しぶりです。
8月は美術モデル以外のことで忙しく、更新が滞ってしまいました。
先日は5,6年ぶりとなる絵画サークルさんにお世話になりました。
同じ制作現場にリピートするというのは、指名ではない場合、ちょっとナーバスになる点もありまして…。
特に絵画サークル系ですね。学校はモデル登場数が多くて当たり前なので。
初めてのときは好評だった会でも、短期間に2回3回と訪れるにつれ、「また貴女なの?」、「他にモデルさんっていないの?」と言われたことがあるのです。
事務所には登録モデルはたくさんいますが、その曜日、その時間帯に動けるモデルが少なかったのでしょうか、たしかに私の登場が多かった…。
今回は片手以上に年数が空いているのでそんなことはなく、とても懐かしく嬉しい気分で会場に向かい、笑顔で再会しました。
絵画サークルを運営するというのは、メンバーの募集や会場の確保、スケジュールの計画、展示会の開催、そしてモデルの手配などなど…運営されている立場の方はとてもパワーを使っていると思います。
そして、それを私より年上の方が元気にこなしています。(もちろん若い人が中心の会もあります)
私も定年退職する年頃になったら、描く側にまわってモデルさんを呼びたいな。それより前の目標としては、こうして何年かぶりの会にモデルとしてお邪魔して、「お久しぶりね」、「まだモデル続けていたんですね」と言われたいなぁ。
そのためには健康でいて、志を忘れないことでしょうか。はい頑張ります。
滲み出る無表情・2
ある日のデッサン会での話です
その日は右腕を頭の上に乗せ、顔の向きは伏し目がちに下を向いた立ちポーズをしていました
私はなんだかとても落ち着いた気分で、呼吸も深くゆっくり行うことができて、あぁ今日は良い感じ…
アルカイックスマイルを体現すべく、微笑みを湛えた仏像の姿を頭の中で思い浮かべていたのでした
ポーズが全て終了し、退出しようとしたときです
1人の女性の方が「なんだか観音様のような表情だったわ」と声をかけてくださったのです
おー!通じたのですね!
とても嬉しい一言でした
また、他のクロッキー会では若い男の子に「女性ってこんな表情するんですね」と言われました
こんな表情ってどんな表情でしょう??!
女性ダブルポーズだったから、ちょっと色っぽい顔していたかなぁ
彼は現在、どんな絵を描いているのでしょうね
きっと心の微妙な揺れや綾、一瞬に灯される感情を感じ取れる作品になっていると思います
滲み出る無表情
20分間のポーズ中、顔の動き(表情)は基本的に無表情です
口角が下がっているのは個人的に嫌なので、アルカイックスマイルの緩やかな感じにできたらいいなぁと思っています
くちもとに微笑みを湛えるアルカイックスマイル
無表情の中にも滲み出るニュアンスがあると思うんですよね
なので、なるべくゆったりとした気分で、優しく・優雅に・ときめいた気分でいられるようにしています(そういう気分の方が時間が経つのが早く感じるしね)
茫洋とした海を眺めている気分になったり、視線の先にある物に「好きだよ…」と思念を送ったりしています
それが窓のサッシだったり床のタイルの継ぎ目だったり、「ポーズ中は入室禁止」の張り紙だったりするのが、ちょっとむなしいですね~
先日はミロのヴィーナスの石膏像にあつーい視線を送ってきました
ヴィーナス様「エッ」